CHIDORI TERRACE
チドリテラス

  • LIVING ENVIRONMENTS

コーポラティブハウスという集合住宅のつくりがある。集合住宅の建設希望者が、建設共同組合を結成して土地を共同購入し、建築家に集合住宅の設計をオーダーメイドするやり方で、欧米ではすごくポピュラーな形式である。

メリットは、分譲マンションよりずっと安価に高品質の空間が手入ることだ。もちろんデメリットもある。打ち合わせが多いから手間や時間はすごくかかる。また、当然ながら全ての希望は叶わないし、自由と同時に決断する難しさも伴う。

建築家としても、実はコーポラティブハウスの方がやりとりが大変なのだが、オーナー達と押し合いへし合いしながら、共同作品として集合住宅をつくる経験は、振り返ってみれば特別な経験である。

チドリテラスは、東京の大田区の閑静な住宅街につくった18戸のコーポラティブハウスだ。

この土地には元々大邸宅が建っていて、土地の持ち主は、まともな集合住宅として継承してくれる人を探していた。うまくコーポラティブハウスの企画会社であるアーキネットが引き受けることができ、私たちに企画設計の依頼があった。

敷地内にあった樹齢100年以上の大樹や、周辺の豊かな緑地、元からある小径、近所の「くさっぱら公園」とうまく繋がるように、流れと溜まりのある平面計画を骨格とした。

それぞれの住戸のオーナーからの要望を丹念に汲み取り、結果として、地階から屋上階まですべてプランの異なる、立体パズルのような多様な住居となっている。

要望を単純に間取りに反映するのではなく、所有権や利用権のような本質的な問題もデザインした。その労力が実って、専用テラスや、専用庭のある住戸、勝手口を持つ住戸、専用階段のある住戸、テラスイン住戸、という感じに全住戸が専用的に利用できる個人の領域を持ち、それが共有の領域とうまく混ぜ合わせた。

集合住宅を多くの人に手が届く価格に抑えるためには、住戸数をギリギリまで増やす必要がある。一方で、パンパンに住戸を詰めた四角い固まりの建築は、街の魅力を損なう。その相反する課題に対しては、容積に算入されない地下住居を積極的に導入することで解決を図った。

どうやったら地下住居が、快適な住まいとなるのか研究して、設計に取り組んだ。ポイントは、高低差がある敷地形状を生かしたサンクンガーデン(掘り込んだ庭)と、地下でありながら、2面採光や3面採光を確保することだった。立体的な空隙(ボイド)がとりまくことにより、光や風が気持ちよく動く。実際住人に聞いてみると、地下であることでまず住環境として静かで、夏は涼しく冬は暖かい住まいとなっているようだ。

A housing complex of 18 individual gardens and homes gathered around a common ground.

Chidori Terrace is a project that inherits the land and garden of an old home located in one of Tokyo’s first generation residential areas, as a co-operative housing complex of 18 units.

The design is based around a courtyard with a rich common space, a small garden along the boundary line that is shared with the town, and a roof garden where the common and private interweave, all while paying homage to the story of this land’s history.

Each of the dwelling units has a uniquely shaped plan, and the boundaries of the architecture are carefully designed so that each unit can have access to a garden.

We planned the overall building to be integrated into its locality by matching the height, scale and geometry with the surrounding residential area, so that the city, the garden, and the dwelling units are connected all across the site.

Masao Nishikawa Photography Studio