Yoyogi Terrace
代々木テラス

  • LIVING ENVIRONMENTS

東京・新宿と代々木の狭間に建つ9戸のコーポラティブハウス式の集合住宅。

高層ビル街から一本内側に入った低層の街に、街の一部に埋め込まれるようにして建っている。敷地の周りを散歩してみると、路地が面白いと感じた。不思議な形にクランクしたり、予想外に行き止まりになっていたりと、都市計画以前の混沌とした東京の面白さが存分に感じられる地域である。建物も、木造の戸建住宅や賃貸アパートや小規模の集合住宅といったヒューマンスケールのものが多く、高層ビル街との対比が非常に面白いと感じた。

古くなって空き家になった大きな敷地の木造住宅を集合住宅に更新していくことは、土地の高度利用、都市の不燃化、地域の活性化の面では良いことだと思ったが、その際に地域の住環境の個性をできるだけ継承したいと考えた。コーポラティブハウス式の場合、プロジェクトに興味を持つ人を募ってから建設をスタートする。多くの場合、この街に住みたいが気に入った住宅がない、というような動機から参加する場合が多く、都市の空間性を継承することはプロジェクト参加者を募る上でも意味がある。

周囲の路地のスケール感から考えて、集合住宅を一つのボリュームとしてつくるのではなく、複数のボリュームに分節したほうがよさそうだと考えた。あれこれスタディをして、3つの棟に分割し、棟と棟の間に2メートルのスキ間をつくることにした。2メートルというのはちょうど周囲の路地のスケール感と一致する。

前面道路への接続が狭かったので、法規的には集合住宅ではなく、全ての住戸玄関に直接通路をつくる長屋形式とした。通常は、長屋形式だと、二階建ての住宅を横に並べただけというデザインが多い。それだと地域の雰囲気に合わないし、デザインも単調となってしまう。単調な長屋形式を避けるために、各住戸が斜めにクロスしかみ合うクロスメゾネットの構成を基本とし、面積の広い階と狭い階とを組み合わせることにした。その結果どの住戸もワイドフロンテージになり、都市にありながら、広がりのある快適な住環境となっている。

立体化された路地は、屋上から地下まで、集合住宅に風や光を通す路として機能し、二面採光、三面採光を確保した。また、周囲の都市のスキ間=路地とつながり、都市の路地空間が立体的に広がっていくような感じになっている。

3棟の構えとクロスメゾネット、立体スキ間という三つのルールによって、シンプルに見える外観の中に、複雑で多彩な暮らしが実現している。

コストコントロールと施工性を意識し、構造と設備の計画は極めてシンプルに解いている。
構造は、3棟にまたがり南北に走る350ミリ構造壁の背骨と南と北の棟の壁面で支え、中央棟は鉄骨ポスト柱で解いて透明感のある空間と構造合理性とを両立している。各階のスラブは上下階の遮音性能を考え、フラットスラブの250ミリとした。

設備については事業性と将来の更新しやすさを考え、全て露出の縦配管としたが、南北棟の外壁とスキ間を通り道とすることで、外観にほとんど露出していない。

コーポラティブハウス形式なので、インテリアデザインは基本的に自由としたが、窓をあけられる範囲とキッチンや風呂・トイレなどの水回りの範囲を各住戸の中に限定的にゾーニングし、自由の中にある種のルールや調和が表れるようにした。

東京の集合住宅で残念なのは、屋上や地下のドライエリアがつまらないことである。折角住宅を集合させても、その集合によって新しい価値を生めていない。このプロジェクトでは、各棟の階高に変化をつけ、屋上全体が庭園のように起伏のあるものとした。また、地下のドライエリアも 空間としては大きくつなぎ、足元の植栽でふんわりと区分して、大きな一体感と各住戸のプライバシーが両立できるように考えた。

集合住宅として空間の質の向上、事業性への配慮、都市空間の質の継承、という3つの視点をそれぞれ妥協せずにこだわりぬいた建築プロジェクトであり、集合住宅の計画が、そのまま小さな都市計画になっていくように考えている。

A plan for cooperative housing in Yoyogi.

< Yoyogi: a place of diverse lifestyles>
Yoyogi is a city that combines the convenience of centrality with the benefits of being so close to the Shinjuku Gyoen Garden and Meiji Shrine. Yoyogi is a rich, complex town and this specific urban quality was used as a starting point for the development of Yoyogi Terrace.

< Creating a new typology of a cooperative house >
The site is a typical flag shaped block, surrounded by buildings on all sides, so it is critical to consider the flow lines of circulation, natural light, and ventilation. With this in mind, we aimed to create a new typology, breaking away from the traditional ‘Nagaya’ style to explore new dynamics of flow.

We began by incorporating the idea of slits running across the building to facilitate the flow of natural light and ventilation to each dwelling. The slits also became the main circulation space, forming an active void that diffuses the private and the public. As such, the building becomes 3 separate sub-buildings which alleviates the feeling of pressure in this dense urban environment.


The key idea has been to develop a design that is ‘plugged into’ the land of Yoyogi, a building that attempts to directly engage with the culture and history of the site. Instead of simply stacking maisonette apartments on top of each other we designed a sequence of spaces that run along an a diagonal that ties the apartments together across the site. It is an apartment complex defined by this axis, creating rhythm as if these 9 units were distinct sequences, woven together and into the site.

設計|藤原徹平/フジワラテッペイアーキテクツラボ(担当:岩井一也、堀江優太)
所在地|東京都渋谷区
構造|RC造(一部鉄骨造)
規模|地上3階 地下1階

敷地面積|343.93㎡
建築面積|203.69㎡
延床面積|750.07㎡

設計期間|2014年5月〜2015年9月
施工期間|2015年 10月〜2016年12月

掲載誌
新建築 2017年2月号

写真クレジット
大倉英揮