House in Tsurumaki
弦巻の家

  • LIVING ENVIRONMENTS

東京・世田谷区弦巻の夫婦と子供3人のための住宅。

お施主さんからの要望は、庭のある家をつくってみたいということと、子供が3人もいるので家の中に多様な居場所がほしい、ということの二点だった。聞いてみると、奥さまの実家が庭のある田舎の家で、庭を感じる家にしたいということだった。敷地は限られていたので、立体的な庭を考えることになる。

高騰する工事コストもプロジェクトを進める上での問題で、すでに何人かの建築家を訪ねたが、予算的に無理と言われてしまったようだ。(私たちは困難なプロジェクトをどうにか解決してくれるという信頼があるようだ。)

敷地は、準防火地域に指定されていたため、3階建てになった段階で準耐火建築物になる。地下階を設け地上2階建てに抑えることで準耐火建築であることを回避したり、鉄骨造や鉄筋コンクリート造にしたりと試行錯誤を繰り返したが、積算価格はなかなか下がらず、最終的に木造3階建てでいくことになった。

木造3階建ての建築はデザインが難しい。柱や梁の架構を防火構造の素材でラッピングする必要があり、「木造なのに木の架構を感じない」という建築になってしまう。

木の建築らしさをどうやって出すかを思案した結果、「庭」を支える木のフレームをつくることを思いついた。土をしっかり入れた「庭」を2階レベルに浮かせて、それを木の架構で支えて「庭の建築」とする。法律的には外部空間の「庭の建築」なら、木の架構とすることができる。これなら予算もどうにかなりそうだった。

庭を感じる家という最初のテーマに対して、「庭の建築」と3層各層がそれぞれがつながっていくことで、家全体の暮らしが豊かになるようにゾーニングしていった。
1階では「庭」は、大きな土間空間となり駐車場と駐輪場と多目的の場になっている。日中は子供たちの格好の遊び場となる。
2階では「庭」は、立ち木が複数植えられたしっかりした土のマウンドをつくった。リビングルームとランドリールームがつながることでここが暮らしの中心となるし、庭があることで、街との心理的な距離感がでるように、手摺などのデザインを工夫した。
3階では「庭」は、木のフレームに囲まれたテラスをつくった。木のフレームによって空間全体が庭と感じられるようにした。

庭の植栽は、造園家の溝口達也氏にお願いした。芝生とシンボルツリーによる居場所となる楽しい活動の庭で、この住宅の暮らしの開放感、家族の中の良さ、明るさがにじみ出ている。

どのフロアに居ても家族の気配が感じられるように、ダイニングルームの上部を吹き抜けにして、さらに中央部に階段を設けた。各所に段差があるので、上下階をに子供たちが活発に動き回るように考えている。

子供室はもっと多様な居場所にすることも考えたのだが、予算を抑える目的と子供の成長によってどのような空間がほしくなるのかわからないということで、ガランドウとしておいた。ただ、普通の家にはない、面白い場所をつくるのほうが良いだろうと考えて、ダイニングルームの天井裏を隠れ家のような空間にした。結果的にはこの小屋裏が子供たちの寝室になっているようだ。

竣工して2年たって、子供室の改修の相談が来た。子供の成長と共に家が育っていくことになる。3人の子供たちにそれぞれの居場所をつくりつつ、ガランドウな感じを残す複雑なワンルームのような案を考えている。現在楽しみながら設計中である。

A house for a couple and three children in Tsurumaki, Setagaya-ku, Tokyo.

This house began with the request for a house and garden, with a variety of spaces for the children to grow up in. As the site was limited, we decided to consider a three-dimensional garden home.

There were a number of constraints in the project that we tried to flip into new possibilities. As the budget was limited we were restricted to building in wood, but the program demanded that we build up to 3 floors. As such, the wooden frame had to conform to more harsh fire-proof restrictions, which meant wrapping the main frame in fireproof material, losing the authenticity of the frame itself.

As a result, we thought back to the garden space and realized a way to bring the frame out of the building, while also using the structure to create a boundary for the garden to thrive within. In the garden space the frame is exposed, creating an in-between: a three dimensional threshold between house and city that runs throughout all three floors.

Throughout the house spaces are designed to engage with this garden space and create a balance of flexible spaces of exploration and inverted spaces of shelter. The central stairwell is designed to connect this sequence of spaces, and intertwine the children’s individuality to the family spaces that hold the house together

設計|藤原徹平/フジワラテッペイアーキテクツラボ(担当:乙川佳奈子、山本梨紗)
所在地|東京都世田谷区
構造|木造SE構法
規模|地上3階

建築面積|69.75㎡
延床面積|138.97㎡

設計期間|2016年3月〜2017年12月
施工期間|2017年12月~2019年3月

掲載誌
新建築住宅特集 2017年8月号
新建築住宅特集 2018年1月号
新建築住宅特集 2019年4月号

写真クレジット
中山保寛