Double circular rings in Todoroki
等々力の二重円環

  • LIVING ENVIRONMENTS

東京・等々力に建つ住宅。

土地を探すところからプロジェクトはスタートした。大きな公園の近くなどをいくつかの土地をお施主さんと一緒に見て回った。私が最終的にオススメしたのは、駅からやや遠くて不定形な土地だが、抜群に周辺環境の良いという等々力の土地だった。

等々力はしっかりした庭を構えている家が多く、緑が街全体にあふれている。極めつけは街の真ん中にある等々力渓谷で、深い森に覆われた谷底の川沿いを歩いていると、本当に気持ちが良い。この土地は駅から遠いが、むしろ駅まで渓谷を毎日抜けていくという、特別な日常を手に入れることになる。最高の土地だと思った。

 世田谷区では、外部空間を庭として緑化することが条例で定められている。この制限をむしろ家づくりのきっかけにしようと考えて、住宅の外側に円環状の庭をつくることを提案した。その上で、住宅内部も回廊型の平面にして、回廊を家族みんなの小さな図書館のようにするという提案をした。全体がワンルーム的になるから、少し住むのは大変かなと思って提案したのだが、意外なことに奥様からの受けがすごく良かった。

 むしろなるべく部屋で割らずにワンルーム的に暮らしたいということだったので、一階を居間、二階を寝間+水作業の空間とした。

 お施主さんから特にリクエストがあったのは、将来実家を継ぐかもしれず、この家はリセールができるようにして欲しいということだった。住宅をリセールする時に重要なのは、改修がしやすいことだ。構造フレームはシンプルな木のグリッドの架構とし、外壁をのみを構造壁とした。内部に壁がないので改修もしやすく、当然施工もしやすい。

 また、外壁素材が劣化しないことも重要になる。何十年経っても、立ち姿が美しければ、価値が分る人も増えてくる。鉄筋コンクリート造にすると重々しくて等々力の環境に合わないし、そもそもコストも合わない。トータルに考え、外壁をガラス張りとする提案を考えた。ガラスは熱負荷を考えてLow-Eの複層ガラスとしている。ガラスという素材は何十年経っても磨けば新品同様だし、大きいガラス面は美術館のようで気持ちが晴れやかになる。
ガラスの部分には安東陽子さんにアルミ繊維を織り込んだような美しい半透明のカーテンをデザインしてもらった。プライバシーを守りつつぼんやりと風景が入ってくる浮遊感のある環境をつくった。

円環状の庭は、お施主さんと私の共通の友人である造園家の溝口達也さんにデザインしてもらった。立ち姿の綺麗な木を数本いれてもらい、下草にも細かく変化をつけたので、木立の中を回遊する楽しさが生まれている。庭によってプライバシーがゆるやかに守られているので、周囲の視線もそれほど気にならないのだと思う。

シンプルでリズム感のある架構、素材感と美しさのある外観、庭と空間の応答、美しい秩序の中で自由に暮らす家である。

竣工して数年が経ち、一階と二階の隙間に子供たちの遊び場としてロフトスペースを増築した。壁を好みの色に塗り替えて、家全体を美術館のように図書館のように楽しそうに彩りながら暮らしている。

A house built in Todoroki, Tokyo.

The landscape of sloping streets that is symbolic of the residential area of Todoroki has been formed as a result of the central valley, the only natural valley in Tokyo. The repetitive up and down rhythms of the area is a dynamic environment that has been formed by glacial movement over tens of thousands of years. In an attempt to maintain this rich environment, local regulations stipulate that all new buildings are required to be set back from the boundary of the site, and the resultant area be used as green space.

By actively utilizing this regulation through landscaping, it is possible to create a continuous space around the building, a ‘circular green ring.’ In addition, we wanted to create an overarching concept for the house that is guided by the ‘dynamic motion’ of the surrounding topography, and create a domestic space where both these sensations can be felt. The site itself is in the shape of a flag pole, and the ‘circular green ring’ is oriented as an extension of the approach, around the building. This continuous garden space is framed by the internal structure, and is designed to be an intermediate region between inside and outside. Internally, the elements necessary for daily life are gathered at the center, allowing activity to flow out to the edge.

The house was assembled in an almost self-build methodology, minimizing the structural language by utilizing a simple wooden module frame wrapped in a Low-e glass curtain wall. The particular depth of the site and the growing garden at the perimeter create a certain level of privacy and exposure, which blends into the environment of the surrounding residential area.

This is a low budget project, and costs were reduced by simplifying the construction method and minimizing the palette of materials. In addition, the open structure and free-plan can be easily re-interpreted by future families, designed to outlive the ubiquitous cycle of ‘scrap and build’ common in the area.

設計|藤原徹平/フジワラテッペイアーキテクツラボ(担当:岡真由美、小金丸信光)
所在地|東京都世田谷区
構造|木造/軸組み工法
規模|地上2階

敷地面積|151.74㎡
建築面積|54.96㎡
延床面積|85.24㎡

設計期間|2010年9月~2011年4月
施工期間|2011年5月~2011年9月

掲載誌
ディテール 2012年7月号
住宅特集 2012年7月号
住宅特集 2012年6月号
カーサブルータス 2012年6月号

写真クレジット
竣工写真|山岸剛、邑内京一郎(詳細は各写真拡大画面に記載)